研究概要 |
複数ひび割れ型セメント系複合材料(HPFRCC)の一種であるEngineered Cementitious Composite(ECC)の主応力軸回転下において性能低下を示す特異点を解消する材料を開発し,構造への適用可能性を検証することを目的に,23年度は数値解析と構造実験を実施した。 既に行った実験結果をもとに数値モデルを構築しその妥当性を確認するとともに,有限要素解析を材料レベル,構造レベルにて行い,ひび割れ面のせん断性能が部材全体の性能に与える影響について検証した。また,テンションスティフニングモデルを構築すべく,R/ECCの一軸引張試験を実施し,ひび割れ分散性を考慮し鉄筋モデルに修正を加えた空間平均化数値モデルを導入した。 材料レベルでの検討から導いた構造に適した材料を用いた梁のせん断載荷試験を実施し,構造レベルでの有用性を確認した。せん断性能が向上し,且つ施工性能も満たすと考えれたHPFRCCに鋼繊維混入率体積比1%と骨材10%の材料を用いて,梁のせん断試験を実施した。試験は,静的,疲労,初期損傷を与えた場合のケースについて,鋼繊維を混入しない場合と比較することで検討した。その結果,梁の静的せん断耐力は明確には向上しないものの,疲労寿命と初期損傷を与えた場合については,性能の向上が確認され,実構造部材で想定される長期共用や多軸応力状態への頑健性が高いことが示され,本研究で得られた成果の有用性を確認した。
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