研究概要 |
本研究では交通流解析の一般理論となる「時空間進化ゲーム」を提案しその特性を明らかにすることを目的としている.本研究の要素は「進化ゲームの動学」「物理的制約」「移動の需要」の3つからなり,これらを順次定式化し,解析および実証分析を行う.平成22年度は進化ゲームの動学の定式化とその解析および実証実験を行った.動学の定式化においては,交通における主体(利用者)がどのように情報を収集するかという点と,収集した情報をどのように活用するかという点の2点それぞれに着目したモデルを構築した.前者では,ある利用者が他の主利用者体からどのように情報を探索し行動を行うかを記述するモデルを作成した.後者では,動的ネットワーク配分理論をベースとしたモデルを構築した.前者のモデルからは,利用者が合理的な範囲で情報探索行動を行うと,利用者のあいだに伝播する情報に一定の偏りがあり,それによって利用者の選択行動に偏りが生ずることが予想された.この予想は簡易的なWebベースのVRを用いた実証実験により検証された.後者のモデルを理論および計算的に解析することにより,動的ネットワーク配分における均衡解の脆弱性(一意性や安定性)が示された.これらの結論は完全情報化の均衡状態という古典的な交通工学のフレームワークの反例となるものであり,本研究が目指す時空間進化ゲームの意義を示す例ともなっている.「物理的制約」の要素については,歩行者や車両の挙動に関する既存研究をベースに定式化を開始している.これにともない,平成23年度以降で使用するバーチャルリアリティシステムの開発も開始した.
|