研究課題/領域番号 |
22686048
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井料 隆雅 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10362758)
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キーワード | 進化ゲーム / 情報探索行動 / バーチャルリアリティ / ミクロ歩行者流モデル |
研究概要 |
本研究では交通流解析の一般理論となる「時空間進化ゲーム」を提案しその特性を明らかにすることを目的としている.本研究の要素は「進化ゲームの動学」「物理的制約」「移動の需要」の3つからなり,これらを順次定式化し,解析および実証分析を行う. 平成23年度は,これら3要素のうち「進化ゲームの動学」の改良を行い,さらに「物理的制約」の定式化と実装を行った.また,「移動の需要」の定式化を開始した.「進化ゲームの動学」については,前年度の特性分析の結果で得られた「均衡状態という概念の脆弱性」を考慮して改良を行なった.「物理的制約」については,主に歩行者を想定した数理モデルを構築して計算機(歩行者シミュレーション)の中に実装したが,複雑な形状をした移動体のモデリングと実装については課題が残っており,次年度に改良を予定している. 上記にあわせて,実証分析のためのVRの構築を昨年度に継続して行った.おもに「交差点や広場レベルの狭域空間」での交通の錯綜をVR上に再現し,その中での被験者の行動を分析するためのプラットフォームを作成した.作成したシステムをもとに比較的少数の実験協力者を集めた予備実験を行った.この際には,VRシステム以外の簡便なシステムによる実験も行い,VRシステムを構築することの必要性も確認している.この予備実験の結果を検討した上でVRシステムの改良を行った上で,60名程度の実験協力者の協力を得た本実験を実施した.この本実験では交錯する歩行者流の中での交通行動の実験的検証を目的とした.実験の結果,「進化ゲームの動学」で定式化したモデルの優位性を確認した. 「移動の需要」の定式化についても平成23年度に着手し,既存研究の調査を行った.これは平成24年度へ継続して行うこととなっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画の中で特に進展が見られたのはVRの構築とそれを用いた実験の実施である.VR構築については予備実験を経た改良を要し,それに一定の時間を費やす必要があったものの,結果的には当初の目的を達成するのにおおむね十分な性能を持つものを構築できた.また,それを用いることにより「進化ゲームの動学」については現状のものが実際の人間行動を説明するのに少なくとも一定のレベルで適用可能であることがわかった.平成23年度は「移動の需要」に関する定式化にも着手しているが,こちらについては定式化がやや遅れている状況である.昨年度から行っている「物理的制約」については,今年度で実装まで一段落終了する予定であったが,こちらについては課題が残っている状況である.以上のように,課題内の個別の小テーマについて進捗にばらつきが見られるものの,全体的にはおおむね予定通り進行していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初計画に準じて行う予定である.「現在までの達成度」で示したように,「物理的制約」の発展的内容に課題がある状況である.これについてはVRの実装とに関連性を持たせた上で解決すべきではないかという感触も得ているので,平成24年度のVRの更新時の進捗にあわせて順次解決していくことを計画している.VRシステムについては実験計画にあるとおりシステムの更新,予備実験,改良を通じて,平成25年度のケーススタディへつながるようなシステム構築を行う計画である.
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