本研究で提案する「時空間進化ゲーム」は,「進化ゲームの動学」「物理的制約」「移動の需要」の3つの要素からなる.平成25年度は本研究課題の最終年度であり,主に時空間進化ゲームの全体的な改良とケーススタディを行った. 「時空間進化ゲームの全体的な改良」においては,特に情報収集と学習プロセスに着目した改良,および,複数均衡解の問題と動学モデルに関する改良を重点的に行った.前者については期待効用理論に基づく行動原理の見直しによる実験結果の説明力の向上や,提案モデルと既知の動学メカニズムとの整合性の検証などを主に行った.後者については,複数均衡解が存在する理由を数理的に精査し,それが数学的には行列の特異性(Singularity)に依拠することを示した.これは,複数均衡解の問題が,単に複数の解があるというだけでなく,さまざまな状況で均衡解の性質(特に安定性や求解の容易性)について問題があることを示す.このことは本研究課題の時空間進化ゲームのアプローチが伝統的な均衡解析に対して優れていることをサポートする結果である.動学モデルに関しては,統計学的手法による収束判定手法の提案に加えて,安定性を阻害しうる要因(特に情報の偏在に起因するもの)の検討を行った. 「ケーススタディ」のうち,バーチャルリアリティ(VR)による実験アプローチによるものとして,歩行者交通に関する伝統的課題である歩行者の回遊行動を取り上げた.昨今注目されている個人用の小型ビークルによる回遊行動を想定した実験と,通常の歩行者による実験の結果を比較し,小型ビークルによる回遊行動の促進の可能性について,プラスの効果とマイナスの効果が発生しうることを示唆する結果を得た.ケーススタディを通じて,構築した時空間進化ゲームの方法論が,これまでよりもより広い範囲の交通現象の科学的理解の可能性を広げるものであることが示せたと考えている.
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