研究概要 |
本研究は,全世界で多大な被害を出しているノロウイルスに関し,その水環境中動態に大きな影響を与えると考えられるノロウイルス吸着性ヒト腸内細菌に着目し,その存在の証明と吸着部位の同定を行うことを第一の目的としている.平成23年度(研究2年度目)においては,まずヒトふん便から分離した組織血液型決定抗原(Histo-blood group antigen:HBGA)様多糖を細胞表層に有する菌株を同定した.その結果, Enterobacter sp.に属する株であることを確認し,Enterobacter sp. SENG-6と名付けた.また透過型電子顕微鏡によりSENG-6とノロウイルス様粒子(Norovirus-like particle:NoVLP)の結合様式を観察したところ,NoVLPは菌体表面ではなく細胞外物質(Extracellular polymeric substances:EPS)に吸着していることが確認された.またEPSを含む菌体の超薄切片を作成して抗HBGA抗体を用いた免疫TEMを行ったところ,HBGA様物質はEPS中に存在することが観察された.そこでSENG-6からEPSを抽出し,NoVLPとの吸着特性をELISA法により評価した.その結果,SENG-6由来EPSはGI7,GII.3,GII.4及びGII.6の各遺伝子型のNoVLPをよく吸着することが示された.以上の結果は,ヒトノロウイルス粒子が特定のヒト腸内細菌が産生するEPSに特異的に吸着可能であることを示しており,ノロウイルス吸着性ヒト腸内細菌の存在証明に成功したものと考えられる.
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