研究課題/領域番号 |
22686049
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐野 大輔 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80550368)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ノロウイルス / 腸内細菌 / 組織血液型決定抗原 / 水環境中動態 / 糖鎖 / 特異的相互作用 / ELISA / 免疫電子顕微鏡法 |
研究概要 |
本研究は、全世界で多大な被害を出しているノロウイルスに関し、その水環境中動態に大きな影響を与えると考えられるノロウイルス吸着性ヒト腸内細菌に着目し、その存在の証明と吸着部位の同定を行うことを第一の目的としている。平成24年度においては,これまでに分離されたノロウイルス吸着性腸内細菌であるEnterobacter sp. SENG-6に対し、ノロウイルス吸着部位となる血液型決定抗原(Histo-blood group antigen: HBGA)様物質が存在すると考えられる細胞外物質(extracellulaer polymeric substances: EPS)及びリポ多糖(lipopolysaccharide: LPS)を抽出し、HBGA様物質存在の確認及びノロウイルス粒子との相互作用評価を行った。その結果、HBGA様物質はLPS中には存在せずEPS中にのみ存在すること、及びEPS中に含まれるHBGA様物質としてはA型様物質が最も豊富であることが確認された。さらに、ノロウイルス粒子とEPS中HBGA様物質の相互作用は特異的相互作用であることが確認され、その結合強度は一般的な抗原―抗体反応に匹敵することが示された。本年度の研究により、ノロウイルスの環境中動態にノロウイルス吸着性腸内細菌が関わっている可能性が改めて示唆されたことから、今度は両者の関わりを実証していくことが重要となる。平成25年度は、水環境中からノロウイルス及びノロウイルス吸着性腸内細菌を同時に検出することを試みる他、HBGA陽性EPSのノロウイルス吸着材としての利用可能性を追求する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度までにノロウイルス吸着性腸内細菌からHBGA様物質を抽出することに成功し、最終年度である平成25年度において、当初予定通りに腸内細菌由来HBGA物質がノロウイルスの環境中動態に与える影響を評価する研究に取り組むことが可能であることから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究で取り組むべき課題は、1)ノロウイルス吸着性腸内細菌がノロウイルスの環境中動態に与える影響の評価、及び2)水サンプルからのノロウイルス濃縮手法におけるノロウイルス吸着性腸内細菌由来組織血液型決定抗原(Histo-blood group antigen: HBGA)様物質の活用、である。両方の課題を通じて、まずはノロウイルス吸着性腸内細菌由来HBGA様物質の合成に関わる遺伝子を同定する必要がある。腸内細菌由来HBGA様物質合成遺伝子の同定に成功した場合には、1)において環境サンプル中からノロウイルス遺伝子と腸内細菌由来HBGA様物質合成遺伝子を同時に検出し、両者の存在量に存在があるか否かを検証することで、ノロウイルス吸着性腸内細菌がノロウイルスの環境中動態に与える影響を評価する。2)に関しては、腸内細菌由来HBGA様物質合成遺伝子を抗生物質耐性遺伝子と共に大腸菌に組込むことで、腸内細菌由来HBGA様物質を合成する大腸菌株の創出を試みる。得られた大腸菌株は、細胞表面上にHBGA様物質を提示すると考えられることから、菌体自体を水中ノロウイルス吸着材として使用することが可能である。以上の内容を、今年度中に達成することを目指す。
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