本研究は,2枚の鋼板の間に粘弾性体を接着し,これを床スラブと梁の間に挿入することで,鋼構造骨組に用いられる従来のRC床スラブの施工性を確保しつつ,鋼部材のリユースに対応し,さらには骨組の地震応答を低減する機能を併せ持った新たな床構造を研究・開発することを目的としている。 平成24年度の研究では,この床構造を適用した1層鋼構造骨組の振動台実験を実施した。試験体は,3つの構面で構成される1/5程度の骨組であり,実験パラメタは,骨組の塑性化の有無・粘弾性体の形状係数・床組の面内剛性・各構面の層せん断剛性や粘弾性体の貼付面積の比率などである。 振動台実験の結果,平成23年度までに実施した骨組が弾性範囲を保つ場合の研究成果と同様に,粘弾性体の形状係数が小さいほど骨組の最大ベースシヤー係数が減少するが,一方で粘弾性体の最大せん断変形が増大することが確認できた。また,骨組の塑性化によって,粘弾性体のせん断変形による消費エネルギーが減少することも確認した。 他方,粘弾性のせん断変形に対するクリアランスが小さい場合には,床と梁が衝突して一時的に極めて大きな加速度が作用すること,粘弾性体に床スラブの鉛直荷重を支持させると応答低減効果が十分に得られないことが振動台実験によって明らかになり,今後詳細な検討を要することを明らかにした。 さらに,粘弾性体の変形を拘束した場合の実験結果から骨組の振動特性を同定し,これらの特性を利用して上記の実験パラメタと対応する時刻歴応答解析を行った。その結果,時刻歴応答解析結果と振動台実験結果は概ね良い対応を示しており,上述した実験的知見と同様の知見を確認することができた。
|