本研究では、都市化の進展に起因する局所的な気候の変化である都市気候の諸問題のうち、ゲリラ豪雨の呼称で近年注目を集める都市型短時間集中豪雨を対象とする。都市型短時間集中豪雨についてはそのメカニズムが未だ解明されておらず、観測による現況把握、及び、シミュレーションによる数値解析の両面からアプローチし、その基礎的な知見を集積する事を目的とする。 東京首都圏のゲリラ豪雨の原因の一つとして、東京湾・相模湾・鹿島灘などからの海風の収束域が都市化の影響により変化した事が挙げられている。海風は最大で高さ1km程度の構造を持つため、その性状を観測するためには地上観測のみではなく高層観測を併せて行う必要がある。平成24年度は東京都心部の1地点において低層GPSゾンデを用 い、上空の風・温度・湿度を同時に観測し、海風到達前後の温度・湿度・風の変化を捉えた。また研究分担者として参画している別の研究課題において、同期間に埼玉県内で同様に低層GPSゾンデを用いた高層観測を行っており、2地点の観測データを総合的に解析を行った。これらの観測結果はシミュレーションを用いた数値解析において、その解析精度の検証や境界条件設定の妥当性の検証に利用されている。 最終的な目標である数値解析を用いた都市型短時間集中豪雨のメカニズム解明については、平成23年度の高層観測を行った期間中の降雨を対象としたシミュレーションを行っているが、降雨現象の複雑性から未だ十分な成果を得られておらず、今後の課題として検討を続ける。
|