日本の住宅における通風の活用は気候風土に順応した必要不可欠な技術であり、その研究の歴史は古い。しかし、「建物周辺状況・建物性能・住まい方」など通風活用における前提条件は近年、著しく変化しており、通風の効果的な活用やその計画法の整備にあたっては、今一度、現状の通風気流性状の実態を把握することが必要である。本研究では、先ず、現在の測定・解析技術を駆使した気流性状の現場計測法を開発する。次に、その測定法により、通風時の室内気流性状の実態を把握し、住宅の省エネかつ快適な運用を目指した通風計画を提案することを目的とする。 平成24年度は、前年度に引き続き、通風による冷房エネルギーの削減効果に関する実証実験を行った。実験は、建築研究所内にある実大の戸建実験住宅(つくば市)を使用し、照明や家電、カーテンの開閉、在室状況(人体からの発熱および発湿)を5分単位で制御し、実際の生活を忠実に再現した条件下で実施した。通風条件においては、快適性に配慮して、室温に閾値を設け、29℃以上になるとエアコンが稼働するように設定した。 また、建物の風圧を実測し、そのデータに基づき計算された通風量と実測による通風量を比較・検証し、両者が概ね一致することを確認した。 これらの結果は、前年度検討した通風による冷房エネルギー削減効果の予測精度の向上につなげるとともに、風圧データを活用した通風期間中の排熱量(潜熱を含む)を明らかにした。
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