本研究の目的は、日常空間における人体局所からの放熱の対流成分、放射成分、気流や着衣に依って変化する人体局所からの熱伝達特性、人体局所に対する環境の代表気温や代表放射温度を計測する新しいサーマルマネキンを開発し、さらには人体熱モデルを統合することによって、温熱生理状態をも評価するシステムを得ることである。 平成22年度は、形状が単純で、放射に関する伝熱面積を理論的に計算できる円筒を対象として、発熱・計測・制御システムの基本設計を行った。FRP上に発熱用のニクロム線を配置、その上を薄いFRPで覆い電気的に絶縁し、その上に表面温度計測用のアルメル線を配置した円筒(1)艶消し黒、2)アルミ塗装、3)艶消し黒とアルミ塗装の縞の3種類)を製作した。20℃、40℃の2つ環境においてそれぞれの円筒のアルメル線の抵抗を測定し、温度計測信号の電位差がAD変換ボードの入力に適したオーダーとなるよう、計測増幅器により信号を増幅する回路を設計した。 加えて、3通り、または2通りの放射率の発熱体での計測を通じて、衣服内空間における放射熱移動、対流熱移動を分離し、衣服内空間厚さを推定するための理論式を導出した。測定精度の視点から、銀の円筒と艶消し黒の2種類の発熱体を用いるべきこと、衣服内空間の厚さが5mm~10mmの場合に有効であることを示した。この理論の検証実験のため、衣服内空間の厚さ5mm、または10mmに設定できる銀と艶消し黒の2種類の発熱円筒による計測・制御システムを構築した。
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