研究概要 |
本研究課題はベトナム・フエ周域の伝統木造建築について住時の設計技術を検討するために,現存遺構の詳細実測調査に重点をおいて進められた.研究代表者による既往の研究成果である伝統技術保持者への設計技術の開き取り結果を実際の遺構に基づいて検討することが主目的である.具体的には研究期間の4年間で「1.フエ周域の伝統家屋の詳細な実測調査(30棟)」,「2.ベトナム中部のディンの実測調査(6棟)」の2点の達成を目標とする. 本年度は「1.フエ周域の伝統家屋の詳細な実測調査」について16棟を実施,「2.ベトナム中部のディンの実測調査」について2棟を実施した.上記「1」における対象物件の選定については,主にA)梁行の柱間数.B)ケオの種類,C)住居か祠堂かの3点を判断材料として型式分類し,併せて地域的な偏りの無いような選択を目標とした、基礎的な柱間寸法,断面寸法のほか,柱径,横架材断面,登り梁の断面形状,登り梁の勾配を実測することに務め,各遺構の所有者等に対する聞き取り調査を行い,概ね当初の計画通りの情報を確保し得た.特に柱転び,登り梁の勾配。各部縁の断面寸法の相互関係についての検討に必要なデータが収集できたことが大きな収穫である.また上記「2」については.伝統家屋に比して既往の研究が進んでいない分野であることから,基礎的な実測図の作成に注力し,基礎的な柱間寸法,断面寸法等を実測し,実測図を作成した.本研究課題の遂行に伴い,事例を増やしていくことで,宮殿建築との比較の視座から,架構形式,平面規模等の分祈を進めていく計画である. また初年度は交付内定通知の時期が遅く(平成22年10月20日),本研究課題の実施に基づく成果発表の機会は次年度以降へ持ち越さざるを得なかった、第一報として平成23年度の日本建築学会大会の学術講演会(関東・早稻田大学)へ成果の一部を整理して投稿し発表決定済みである.
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