本研究課題はベトナム・フエ周域の伝統木造建築について往時の設計技術を検討するために,現存遺構の詳細実測調査に重点をおいて進めている.研究代表者による既往の研究成果である伝統技術保持者への設計技術の聞き取り結果を実際の遺構に基づいて検討することが主目的である.具体的には研究期間の4年間で「1.フエ周域の伝統家屋の詳細な実測調査(30棟)」,「2.ベトナム中部のディンの実測調査(6棟)」の2点,合計36棟の実測調査の達成を目標とする. 本年度は「1.フエ周域の伝統家屋の詳細な実測調査」について11棟を実施,「2.ベトナム中部のディンの実測調査」について1棟を実施した. 上記「1」に関しては,基礎的な柱間・断面寸法のほか,柱径,横架材断面,登り梁の断面形状,登り梁の勾配を詳細に実測することに努め,各遺構の所有者等に対する聞き取り調査を行い,概ね当初の計画通りの情報を確保し得た.これについては研究期間開始からの4年間通算で合計32棟の調査を終了し,当初計画より2棟増の結果を得た.また今年度の調査により対象遺構の地域的な偏りはある程度改善された.上記「2」については,伝統家屋に比して既往の研究が進んでいない分野であることから,基礎的な実測図の作成に注力し,基礎的な柱間寸法,断面寸法等を実測し,実測図を作成している.これについては4年間通算で合計11棟の調査を終え,当初計画より5棟増の結果を得た.全体で見れば当初計画36棟に対して,合計43棟の実測調査結果を得る結果となり,当初の計画以上に調査研究の実施が完了した. なお,本研究課題の実施に基づく成果は,平成26年度の日本建築学会大会の学術講演会(近畿・神戸大学)へ成果の一部を整理して投稿し発表決定済みである.
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