研究課題
金属材料の結晶粒界の剥離強度を実験で測定する場合、通常の手法では転位が粒界にパイルアップする影響が必ず含まれてしまうため、シミュレーションで導出した理論計算値と直接比較することができないという問題がある。この問題を回避するために、転位フリーのナノサイズ試験片を作成し、マニピュレータを用いて引張り破断させることによって、剥離強度を測定する実験を提案した。しかしながら、試行錯誤を重ねた結果、この手法では試験片のハンドリングに難があることが明らかになったため、別の手法を開発することに予定変更した。これは透過型電子顕微鏡を用いたその場引張り実験であり、粒界が剥離する瞬間を原子レベルの分解能で動的に観察し、クラック先端における格子縞の広がり幅から弾性歪量を定量評価することによって、原子間結合の切断に要する応力レベルの臨界値を導出するという実験である。そのような実験は世界初の試みであったが、技術開発することに成功した。但し、現時点までに観察できたのは、結晶粒内を進行するクラックのみであり、粒界に沿って進行するクラックに関しては難易度が高く、決定的なデータを取得するには至らなかった。本研究には、手法の開発に加え、粒界破壊のメカニズム解明という材料研究としての側面もあるが、その目的については次のような知見が得られた。まず、従来の一般的な認識では、粒界が割れるときには不純物濃度が最大のところを境にして均等に割れると考えられていたのに対し、実際はそのように割れることは稀であることを明らかにした。また、偏析不純物の濃度が同じ粒界でも場所によって不均一であることや、濃度が最大となるのは常に三重点であること、三重点に核形成したクラックが粒界破壊の起点になることなども明らかにした。従来の破壊理論で見落とされていたこれらの盲点は、今後、実験・モデリングの両面において新たな指針になると期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Nuclear Materials
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10.1016/j.jnucmat.2014.01.036
10.1016/j.jnucmat.2014.01.004
ISIJ International
巻: 443 ページ: 266-273
10.1016/j.jnucmat.2013.07.035
Philosophical Magazine Letters
巻: 94 ページ: 18-24
10.1080/09500839.2013.853135