研究課題
本研究課題は強磁性トンネル接合(MTJ)用の新規トンネルバリア材料:スピネルMgAl2O4バリアの作製技術開発を通し,巨大なトンネル磁気抵抗(TMR)を得ることを目的としている。本年度は最終年度として、MgAl2O4バリアによる巨大TMRの実現と、そのメカニズムの解明に主眼を置いた。MgAl2O4(1~2nm)バリア層作製にはFeなどを下地として、Mg/Alの2層構造を酸化する方法とMgAl合金層を酸化する方法がある。前者の方法では作製最適条件が比較的狭く、最大TMR比も約165%(Fe電極、16K)と小さい。一方後者では作製可能条件が広くTMR比はFe電極では約330%(15K)、よりスピン分極率が高いCoFe電極では約480%(15K)ときわめて大きく、MTJ用の主要バリア材料であるMgOに匹敵する値が達成された。電子顕微鏡によるナノ電子ビーム回折像から、それぞれのバリアの結晶構造に違いがあることがわかった。前者ではMgAl2O4のスピネル構造を有しており、その有効格子定数は0.8nm程度であったが、後者では陽イオンサイトに不規則構造を持つスピネル構造であり有効格子定数が元の半分の約0.4nmであり、異なる結晶系に属することが明らかになった。Fe/MgAl2O4/Fe構造のスピン依存伝導の理論計算によって、有効格子定数がスピネル構造から半減することによってコヒーレント効果によるTMR比の増大効果が大きく増幅すること、陽イオンサイトの不規則化による伝導への影響は小さいことが明らかになり、実験での巨大TMRを説明できた。すなわち「陽イオンサイト不規則化スピネル」はスピン素子用バリア材料として非常に有望であることがわかった。また、高スピン分極率を有するCo2FeAlホイスラー合金層上へMgAl2O4バリアの作製方法も確立しており、今後さらなる高TMR比の達成が期待できる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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