研究概要 |
本研究は、包晶反応を利用した凝固組織制御とその後の熱処理のみによって、包晶鋼のオーステナイト粒組織をサブミクロンレベルまで微細化することを目的とする。特に、(a)Ti,Nb,V等の炭窒化物等を利用した凝固組織微細化法の発展と、(b)微細凝固組織を初期組織とする固相変態カイネティクスにおける結晶粒微細化技術への展開、を試みるものである。 平成23年度においては、得られた知見を以下にまとめる。 (a)凝固組織微細化法の発展 包晶凝固鋼の鋳片オーステナイト粒組織が不連続粒成長によって粗大化することを明らかにし、その粗大化防止の条件をシミュレーション及び理論から提案した。その実証実験の一環として、鋳片組織の粗大化が著しい0.2mass%炭素鋼を対象として、炭窒化物安定化元素のNbを添加することでNb(C,N)のピン止め効果が発現して粗大粒の成長が妨げられ、鋳片組織が微細化できることを示した。また、本年度の成果において特に重要な点は、本来、包晶反応を示さないような鋼種であっても、δフェライトの核発生サイトとして働くTi(C,N)を溶鋼中に存在させることで、包晶反応を誘起し、鋳片組織を劇的に等軸微細化させることができることを明らかにした点にある。したがって、本研究で得られた微細化指針は、包晶凝固鋼以外の鋼種にも適用しえる可能性が示された。 (b)鋳片組織からの逆変態による微細化の調査 Ti添加鋼を対象として、逆変態過程におけるオーステナイト組織の微細化過程を調査し、高昇温速度で繰り返し変態を行うことで、初期の鋳造組織が粗大であっても、数ミクロンのサイズまでオーステナイト粒が微細化することが示された。したがって、(a)で得られた知見をもとに、逆変態前の初期組織が微細な鋳片を使用することで更なる微細化効果が期待される。
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