研究概要 |
過冷融液形成を伴う準安定組織から平衡組織への相変態は、Al_2O_3・Y_2O_3系でのみしか観察されておらず、準安定組織の形成条件や過冷融液形成の条件など不明な点が多い。この現象の普遍的な理解や他の材料への応用のためには、原子種を変化させた系統的な研究が必要である。そこでコランダム構造(α-Al_2O_3)、ガーネット構造、ペロブスカイト構造を有したAl_2O_3-Dy_2O_3、Ho_2O_3、Er_2O_3共晶系について、準安定共晶の選択が起こるのかを調べた。また、準安定共晶の再溶解によって過冷融液が形成され、同時に平衡共晶で凝固するかどうかを調べた。Al_2O_3-M_2O_3系(M=Dy,Ho,Er)のいずれの系において融液を2050℃から急冷凝固させることにより準安定共晶が選択できた。さらに準安定共晶が準安定共晶温度以上で溶解し、過冷融液が形成され、同時に平衡共晶で凝固した。溶解凝固界面の移動速度は10^<-4>~10^<-3>ms^<-1>のオーダーであり、準安定共晶温度における平衡共晶温度に対する過冷度とは無関係であった。準安定共晶から平衡共晶への変態時にはいずれの系でも10%程度の体積膨張が起きる。従って、準安定共晶温度において準安定共晶組織が溶解するのは、体積膨張によって発生する弾性歪エネルギーにより、固相内での平衡共晶の成長を抑制するメカニズムもしくは、準安定共晶温度まで固相変態が起こらない可能性があることが示唆された。 本プロセスを利用して機能性を付与したセラミックス材料の開発を目指して、蛍光特性を有するAl_2O_3-YAG(Ceドープ)共晶の作製を試みた。Al_2O_3-YAG平衡共晶はCe添加の場合、組織の色が黄色に変化し、組成分析により、CeはYAG相に置換されている可能性が高いことが明らかとなった。Ce添加のAl_2O_3-YAP準安定共晶とAl_2O_3-YAG平衡共晶からそれぞれ波長480nm付近で吸光度スペクトルのピークが検出され、本プロセスを利用した蛍光特性の付与の可能性を示すことが出来た。
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