研究課題/領域番号 |
22686074
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水越 克彰 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60342523)
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キーワード | 合金ナノ粒子 / コア・シェル構造 / 触媒活性 / 光触媒活性 / 超音波 / 第一原理計算 / フラッシュフォトリシス / 電子構造 |
研究概要 |
これまでに超音波還元法で作製し二酸化チタン表面に担持した金コア・パラジウムシェル型ナノ粒子の触媒活性、光触媒活性を評価し、パラジウムのシェル厚が原子2-3層程度のときに、シナジー効果が顕著になることを見出した。これは、金・パラジウムナノ粒子の内部構造に応じて触媒構成元素の電子構造が変化することを示唆する。 X線光電子分光法で、パラジウム・シェルが薄い(金/パラジウム比が大きい)試料では、パラジウム3dのピークが低結合エネルギー側へピークがシフトすることが分かった。この結果は、密度汎用理論に基づくLinearized Augmented Plane Wave法による第一原理バンド計算結果と符合した。つまり、コア・シェル構造を模したサンドイッチ構造の金・パラジウムでは、金の割合が高く、パラジウム・シェルが薄いほど金の電子がパラジウムに多く移動することが示された。これは電気陰性度ではなく仕事関数によって説明でき、金とパラジウムが非常に近く隣接すると、トンネル効果によって両金属間での電子移動が可能となると考えた。 光照射時の遷移的な電子状態はレーザーフラッシュフォトリシスで評価した。光触媒である二酸化チタンに超音波還元法で担持した金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴吸収は、紫外線レーザーパルスに照射によってそのピーク位置が短波長側にシフトすることを確認した。これは光励起された二酸化チタンの電子が、ショットキー接合した金に濃縮され、金ナノ粒子内の電子密度が増したことを示唆する。また励起スペクトルの緩和は非常に遅く秒オーダーであることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作製した試料の観察に必要な電子顕微鏡が震災の影響で復旧に時間を要したこと、加えて分光法での分析になじむ濃度、分散性、透明性を有する試料の調製に時間を要したことが研究遅延の主たる原因である。
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今後の研究の推進方策 |
フラッシュフォトリシス法や放射光によって、合金ナノ粒子担持二酸化チタンに紫外光照射した際の光励起電子の挙動(励起電子のナノ粒子への移動や濃縮、さらに消光後の緩和)について調査する。試料の調製方法は超音波還元法に拘らず、測定法に見合った濃度、分散性、透明性を満たす手法・試料組成を適宜選択する。過渡的な電子状態は、進捗に応じて時間分解分析が可能なD-XAFS法での分析も念頭に置く。また電子状態の第一原理計算によるシミュレーションは、早稲田大学 斉藤良行教授の協力を得て継続する。合金粒子の構造と、電子状態、触媒活性の関連を調べる。金・パラジウム系合金ナノ粒子について検討を行い、進捗状況に応じて、他の金属系に拡張する。
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