研究概要 |
1.貴金属フリー触媒への展開 前年度のCuAg系触媒の検討結果をベースに、触媒調製条件・触媒構造・触媒活性の相関関係に関する仮説を立て、既存Ag触媒の活性を1桁上回るNi触媒を見いだした。概要を以下に示す。 NiO/Al2O3を水素還元後,大気に曝さずに用いた触媒(Ni/Al2O3)が2級アルコールの液相脱水素反応によるケトン生成と,アルコールとNH3からの直接的1級アミン生成を効率的に進行させることを見出した.担体酸塩基性,Ni粒子径,Ni酸化状態と活性の相関関係及びin situ IRによる機構研究より,以下の結論を得た.両反応ともに担体上の酸塩基ペアサイトと粒径の小さい金属Ni上のNi0種を必要とする.アルコール脱水素は,(1) Al2O3の酸塩基ペアサイトによるアルコールのプロトン引き抜き(Al-OR, Al-OHの生成),(2) 隣接Ni0サイトによるAlアルコキシドのC-H切断(Ni-H種の生成),(3) Al-OHとNi-H種の反応によるH2生成の3段階で進行する.1級アミン生成についてはアルコールの脱水素,カルボニル化合物とNH3からのイミン生成,触媒上の解離水素種によるイミン水素化の3過程で進行するものと推察される.従来,本系は白金族錯体触媒を用いて検討されてきた.本成果は,金属/担体界面における配位不飽和金属種と担体酸塩基共役サイトの協働作用を利用すれば,分子設計された白金族錯体に匹敵する固体触媒の設計が可能であることを示している.今後,実用性の高い触媒系として種々の水素移動型反応への応用が期待される. 2.研究の総括 全体の成果を総括し、有機合成、自動車排ガス浄化の両分野において白金族触媒を上回る非白金族触媒の設計指針を提案した.
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