研究期間内に、130x90mm^2サイズのポリエチレン製96穴プレート上に1.0x10^7cm^<-2>の密度で集積したナノフィッシュボウルアレイによる近赤外光応答局在表面プラズモンセンサーを開発し、アルツハイマー病バイオマーカーのピコmolレベルの高感度検出を最終目標とする。初年度は以下の研究項目を実施した。 (1)ナノギャッププラズモンによるセンシング感度の高感度化 これまでの実績をベースに、ガラス基板上にPS@Auナノシェルアレイの作製をおこなった。鋳型となるPSナノ粒子アレイの作製法として、従来のスピン塗布法にかわって移流集積法を採用することにより、大面積範囲においてより高精度・高密度に充填されたPSナノ粒子単層膜の作製を実現した。気圧ヘリウムプラズマを用いた当方エッチングによりナノ粒子を加工した結果、近赤外から可視領域にかけて二つの狭小な共鳴ピークが観測された。FDTD法をもちいた電磁場解析より、近赤外領域に出現したプラズモンピークは、ナノ粒子間の間隙に発生するギャップモードプラズモンであることが判明した。LSPRセンサへの応用から、その感度特性を計測したところ、300nmRIU^<-1>は得られ、従来の2倍上の高感度化を実現した。 (2)PS@Auナノコーンアレイの作製とその光学特性評価 これまでと同様の手法でPSナノ粒子アレイを作製したのち、このナノ空間にイオン性液体を流し込むことによりナノ粒子をイオン性液体で被覆した。イオン性液体をエッチングマスクとしてもちいた大気圧ヘリウムプラズマ加工をおこなった結果、イオン性液体の液面高さを制御することにより、PSナノ粒子の非対称的なエッチングが可能となる。空気界面にむかって先が尖ったナノコーン構造の作製に成功した。このナノコーンを金で被覆したPS@Auナノコーンアレイの光学特性を調べた結果、狙い通りの近赤外波長領域に鋭い共鳴ピークをしめし、その感度は590nm RIU^<-1>が得られた。ナノシェル内への非対称性構造の導入に世界で初めて成功し、世界最高レベルのセンシング感度を実現することができた。
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