本研究では、「生細胞内の遺伝子シグナルを釣り針として望みの細胞を単離する」前例のない新しい技術を開発する。これまでの細胞単離法は細胞表現型(例えばタンパク質マーカー)を識別することで分離する技術がほとんどである。一方、近年、DNAチップなどの網羅的遺伝子解析技術の発展により細胞種を見分けるための遺伝子マーカーの探索が容易となった。そこで、申請者は自身がこれまでに開発してきた「生細胞内RNA検出プローブ」を適用することで遺伝子型に基づいた細胞単離技術を確立する。本年度はプローブの高感度化を検討した。まず、微量RNAシグナルを観測する場合、細胞の自家蛍光が問題となる。その低減のために、長波長領域にシグナルを発生する赤色蛍光化合物(660nm)を設計した。ナフソローダミンを基本骨格として、その両アミノ基をアジド基に変換することで赤色領域に蛍光を発生する新規化合物を合成した。この化合物をDNA鎖に導入することでRETF(Reduction Triggered Fluorescence)プローブを作成できた。続いて、RETFプローブの特徴である化学反応によるシグナル増幅について最適化を行った。DNAプローブの長さを種々検討したところ、DNAの融解温度に近い反応温度で検出反応を行うと効率のよいシグナル増幅効果を観察できた。例えば、10塩基のプローブを用いた場合は25□Cでもっともよいシグナル増幅が可能となった。本プローブを細胞内に導入したところ、生細胞内RNAをイメージングすることが可能であった。また、フローサイトメーターを用いた解析でもRNAシグナルを観測することが可能であった。
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