本研究の目的は次世代小型衛星に必須の革新的な小型プラズマ宇宙推進機を実現させる事である.この中で,平成24年度の研究において次に挙げる5項目を達成した:1)推力ノイズ要因の解明とノイズ低減方法の確立,2)プラズマ生成のための共振機構の解明とモデル化,3)高分解能プラズマ分布測定の実施,4)実機搭載用イオンスラスタの微小推力測定,5)長時間試験装置の開発と試験開始. 各項目の詳細を記す.1)ドラッグフリー等の高度なミッションに不可欠な静推力を実現した.推力ノイズを各装置からの寄与に分解することでノイズ要因を特定する方法を確立し,さらにフィードバック制御によって1桁以上の推力ノイズ低減が可能であることを実証した.2)マイクロ波アンテナの支持構造部の形状によって,プラズマ生成室との間に共振構造を設けられることを発見した.この共振状態を全電磁場解析を行わずに支持構造部のSパラメータのみで表すモデル化に成功した.2)前年度までに構築したプラズマ計測方法を用いて,分解能0.1 mm測定点数6000点を持つ高解像度分布の測定に成功した.3)微小インパルス測定用装置を用いて,実機搭載用イオンスラスタの微小推力の測定に成功した.4)スラスタの長時間運転能力を実証するための試験装置を開発し,これまでに累計1000時間以上の運転に成功した. また,特筆事項として,本研究全体の目標として宇宙飛翔機会を得ることを掲げていたが,平成23年度の活動中に50kg級超小型衛星「ほどよし衛星4号」において本小型イオンスラスタを実証する機会を得ることに成功し,平成24年度の活動中においては同衛星搭載用の小型イオン推進システムのエンジニアモデルの開発に成功した.開発自体は研究代表者の技術統括の下で「ほどよし衛星4号」プログラムの下で実施されているが,開発に必要な知見/技術/実験は全て本研究で得られたものである.
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