高いベータ値を持つ高性能炉心プラズマを実現するためには、加熱およびフローの形成が重要である。本研究では、低周波波動という手段を用いて加熱とフロー駆動の効率的な実現を目的としており、本年度はプラズマ合体による高ベータプラズマ形成時の揺動発生の計測を中心とした実験研究を実施した。低周波磁場揺動を観測する測定器を作成するにあたり、測定用コイルの巻数、素線材料等を検討し、10MHz以下程度の磁場揺動ベクトルを測定可能なプローブアレイを複数作成し、プラズマ合体実験装置に装着した。このプローブを用いて磁気リコネクション領域内外での揺動計測を実施した結果、リコネクションする磁場に直交する磁場成分(ガイド磁場)の有無という二種類のプラズマ合体について、異なった周波数帯の磁場揺動の発生が確認された。ガイド磁場の無い場合には、400kHz以下の周波数を持つ磁場揺動がリコネクション領域を含む比較的広い範囲で観測された。これはつなぎ変わった磁力線の張力による収縮運動がシアアルヴェン波を励起した可能性を指摘することができ、リコネクションによるイオン加熱と密接に関連していると考えられる。一方で強いガイド磁場の存在下では、イオンサイクロトロン周波数よりもやや高い2MHz近傍の周波数を持つ非常にコヒーレントな磁場揺動が観測された。これらの実験結果から、リコネクション領域内の局所的な磁場構造の違いないし発生する不安定性の差異によって異なる種類の揺動が発生していると考えられる。さらに、低周波揺動の発生に伴う加熱・フローの発生を観測するための、ドップラー分光システムの整備を行った。一視線でのイオン温度・流速の時間発展計測を実施し、ガイド磁場のある場合のプラズマ合体について、リコネクションに対応する時間帯での流速発生を示唆する初期結果を得た。
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