研究課題
高いベータ値を持つ高性能炉心プラズマを実現するためには、加熱およびフローの形成が重要である。本研究では、低周波波動という手段を用いて加熱とフロー駆動の効率的な実現を目的としており、本年度は磁気リコネクションによって励起される波動の詳細な観測と、イオン加熱との関連についての実験的検討を実施した。ガイド磁場が存在する磁気リコネクション条件の下で、イオンサイクロトロン周波数帯の大振幅磁場揺動が観測された。波動の分散関係から、最終的には運動論的アルヴェン波が励起された可能性が高い。磁場揺動の振幅は最大でリコネクション磁場の20%以上に達しており、局所的な磁場構造変化が磁気リコネクションそのものに影響を与えている可能性が示唆される。また、静電揺動の初期計測結果では、大振幅磁場揺動の発生に先駆けて低域混成共鳴周波数帯の揺動の発生が確認されており、電流シート周辺部におけるドリフト不安定性を主要因として大振幅揺動が駆動されている可能性がある。低周波揺動の発生に伴う加熱・フローの発生を観測するため、光電子増倍管を用いた時間発展ドップラー分光システムを1視線から8視線へと拡張した。これによって、イオン加熱/フローの発生について空間分解能を有した高時間分解計測が可能となった。初期的な結果として、磁気リコネクションとほぼ同じタイミングにイオン温度の短時間での増加が観測されており、揺動発生との関連性が示唆される。
2: おおむね順調に進展している
特定の条件下で非常に大振幅の磁場揺動が発生することが発見され、磁気リコネクションによる高ベータプラズマ中の波動励起メカニズムの解明に大きな示唆を得ることができた。磁場揺動、静電揺動ならびにドップラー分光によるイオン温度・流速などの各種計測装置の整備開発に関しても、研究計画に沿った形で順調に進展している。
今後は、パラメータスキャンによる大振幅低周波揺動のモード同定を行い、理論値ならびに外部アンテナを用いて実測する波動分散関係との比較を通して波動励起メカニズムの本質を明らかにする。特に、特定の周波数の波動のみが支配的となる理由について詳細に検証を行うと同時に、該当する波動を外部から励起する手法についても調査を行う。さらに、イオン温度/流速分布、電子温度分布といった計測を充実させることにより、加熱およびフロー駆動との関連性について定量的な評価を行う。
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