研究概要 |
前年度までに確立した、DT40細胞での次世代質量分析SILAC法の検証のため、以下のパイロット実験を行った。DT40細胞で、DNA損傷に応答して誘導されるユビキチン化タンパク質の網羅的探索を行った。具体的には親株の野性型と、ユビキチンのタンパク質への付加に関わる遺伝子rnf8, brca1, rnf168, ubc13の各遺伝子破壊体の細胞とをそれぞれ同位体ラベルで区別し、それぞれの細胞をミックスして(野性型と各変異体細胞)、ユビキチン化されたタンパク質の精製を行う。このユビキチン化タンパク質の精製には、His6タグ融合ユビキチンをレトロウィルスを用いてDT40で過剰発現させ、NiカラムによるHisタグタンパク質の精製を行うことで、Hisタグユビキチン化タンパク質を精製した。この試料を質量分析して有意なピーク間の差を検出することで、標的タンパク質(ユビキチン化のターゲット)を探索した。我々はすでに、DNA損傷に応答してヒストンH2Aが高度にユビキチン化を受け、Ubc13-Rnf8のユビキチンリガーゼ複合体に依存することを見いだしている(Zhao et al, 2007 Mol Cell)。今回のパイロット実験では、Rnf8依存的にDNA損傷により誘導されるユビキチン化タンパク質として、ヒストンH2Aが同定できるのか検討を行ったが、同定出来なかった。現在、タンパク質の標識法、精製法、MSサンプル調製法、ニワトリデータベースなど多面的なトラブルシュートをチューリッヒ大学Dr.Roschitzkiとの協力体制で行っている。DNA損傷時のユビキチン化によるシグナル伝達経路は、ターゲットタンパク質が未解明のため、ほとんどわかっていないので、SILACによる網羅的ユビキチン化ターゲットの探索は、当該分野に貢献できる。
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