本研究では、他の大陸に見られない一斉結実が見られる東南アジア熱帯林で、オランウータンなどの大型動物が、果実生産の季節性に対して、どのように反応しているのかを明らかにし、結実の季節性に対する反応の違いが、異種の共存に貢献しているという仮説を検証することが目的である。 本年度は、ダナムバレー森林保護区・キナバタンガン下流生物サンクチュアリ・タビン野生動物保護区の三つの調査地で、カメラトラップによる大型動物密度のモニタリングを5月から7月に開始した。それに加えて、気候と果実生産の季節変化についての定期的なモニタリング調査を並行して行った。調査開始当初に一斉結実が見られ、これは調査地であるサバ州東部では、過去10年間で最大のものであると考えられる。結果についてはまだ予備的な分析しか行っていないが、3箇所の調査地いずれでも一斉結実が起こり、ヒゲイノシシの総個体数が増加し、新生児が観察された。その他の種については、個体数や繁殖の増加は確認されなかった。このことから、一斉結実に対する数の反応を示すのは、ヒゲイノシシのような、ごく少数の種に限られることが示唆される。 また、一斉結実が大型動物の栄養収支に与える影響を評価するため、果実試料を収集し、その栄養分析を行った。 過去に調査を行った、レッドリーフモンキーについて、資料の分析を行い、一斉結実に対する機能の変化について研究を進めた。
|