研究課題
本研究では、他の大陸に見られない一斉結実が見られる東南アジア熱帯林で、オランウータンなどの大型動物が、果実生産の季節性に対して、どのように反応しているのかを明らかにし、結実の季節性に対する反応の違いが、異種の共存に貢献しているという仮説を検証することが目的である。本年度は、ダナムバレー森林保護区・キナバタンガン下流生物サンクチュアリ・タビン野生動物保護区で昨年度開始した、カメラトラップによる大型動物密度の季節・空間変異と、気候と食物利用可能性の季節変化についての定期的なモニタリング調査を継続して行うとともに、キナバタンガン下流生物サンクチュアリでも、野外調査によって行動観察による調査を実施した。具体的な調査項目は以下のとおりである。1.密度センサス:調査路近傍に自動撮影カメラを設置し、カメラ撮影頻度を密度の代理指標とする。上記3つの調査地で行う。2.生物季節・気象の調査:調査路上の樹木の展葉・開花・結実フェノロジーと雨量、気温を記録する。上記3つの調査地で行う。3.行動観察:キナバタンガン下流生物サンクチュアリに生息する7種の昼行性の霊長類のうち、ブタオザルを主要な対象とする。ブタオザルは広大な遊動域を持っており、一斉開花結実に対し、ほかの種にはない反応をすることが予測される。ブタオザルの調査はまだ準備段階で、本格的な資料収集の開始には至っていないが、数回の予備調査の結果、調査地内での群れの分布がおおよそ明らかになり、行動観察による詳細な資料収集の体制が整いつつある。
2: おおむね順調に進展している
カメラトラップによる3箇所の大型動物の数の変動のモニタリングと果実生産の調査は、順調に行われている。すでに平成22年度の調査開始当初に非常に大きな一斉結実が見られたため、目的の達成はすでに確実で、現在は非結実期のデータを取り続けている状態である。新たな調査項目として取り組んだブタオザルの調査は、現在まだ準備段階だが、準備は順調に進んでおり、来年度に本格的な資料収集を開始できると考えられる。
カメラトラップによる調査は、すでに一斉結実時の調査を終えたことから、維持の困難な調査地から、順次撤退を開始する。その分の余力を、新たに開始したブタオザルの調査に振り向けることにする。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)
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