我々は、鳥類(ニワトリ)及び哺乳類(ラットとマウス)において48時間絶食条件下や摂食関連病態モデル(肥満及び糖尿病)動物で発現量が変化する新規摂食関連遺伝子を最近見出している。本新規遺伝子から翻訳されるタンパク質には分泌性ペプチドがコードされていると考えられ、新規神経ペプチドの前駆体遺伝子である可能性が高い。本研究では新規遺伝子がコードしている神経ペプチドを同定し、本ペプチドの生理機能を解明することを目的としている。本年度は以下の研究を行った。 (1)新規摂食関連遺伝子翻訳産物である成熟神経ペプチドの同定 まず、動物組織を用いて成熟神経ペプチドの同定を試みたが上手くいかなかった。次に、新規摂食関連遺伝子を哺乳類細胞にトランスフェクションし、産出される成熟ペプチドを2種類の抗体を使ったウェスタンブロッティングにより検出することを試みた。その結果、88残基に相当すると考えられるシグナルを検出することができた。現在、この物質の内部修飾やより正確な構造を明らかにするために、質量分析による構造解析を行っているところである。次年度も引き続き解析を進める。 (2)成熟神経ペプチドの産出方法の確立 生理機能解析のためには神経ペプチドを動物に投与し、行動解析を行う必要がある。しかし、この神経ペプチドは小タンパク質であるため固相法を用いた化学合成では合成が困難であることが予備実験で分かっている。そのため、大腸菌を用いた組換えタンパク質合成系を利用したペプチド産生が必要である。本研究では、組換えペプチド産出法を確立させるため、GFPやHisなどのタグとの融合タンパク質発現系での産出を試みた。その結果、可溶化する発現系を見つけることができ、神経ペプチドの産出に成功した。 次年度は、合成された神経ペプチドを用い、ニワトリやラットの脳室内投与を行い、摂食量及び体重変化を測定することにより摂食行動への影響を解析する予定でいる。
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