研究課題
下等脊椎動物は、松果体を使ってUV光と可視光の比率という“色”情報を得ていることが知られている。本研究では、申請者が見出した松果体色弁別の光受容分子パラピノプシンを起点として、松果体色弁別機構の解明および長年の謎であった生理的役割の解明、さらには下等脊椎動物の多様な松果体関連器官の機能的・進化的関係の解明を目指す。具体的には、パラピノプシンを発現する細胞をターゲッティングしたトランスジェニック(Tg)ゼブラフィッシュを作製し、色弁別のための神経ネットワークの解明、色情報の脳内投射先の解明、パラピノプシン発現細胞を失活させたTgゼブラフィッシュの電気生理学的・行動学的解析を行う。平成24年度は以下の成果を得た。・ゼブラフィッシュの松果体から、色弁別応答への関与が示唆されるUV光と可視光に対する拮抗的な応答を細胞内記録により得た。・パラピノプシン発現細胞に経シナプストレーサーであるWGAを発現するTgゼブラフィッシュの系統を樹立した。・松果体色弁別の生理的役割を解析するために、UV/可視光比を制御できる行動実験系を立ち上げた。・松果体の多様な光受容細胞について、代表的な松果体のマーカー分子であるセロトニンの有無を明らかにした。・円口類ヤツメウナギについてのパラピノプシンを起点とした組織学的実験から、松果体色弁別メカニズムにおける魚類と円口類との違いを見出した。
2: おおむね順調に進展している
前年度までに立ち上げを完了した電気生理実験系に加え、さまざまな解析に必要なトランスジェニックゼブラフィッシュの作製に成功しており、研究の進捗は順調と言える。また、並行して進めているパラピノプシンを含む松果体光受容タンパク質の組織学的解析からも順調に成果が得られている。尚、実験動物であるヤツメウナギの入手が遅れたが、最終的には予定していた成果が得られた。
各実験目的のために作製したトランスジェニックゼブラフィッシュの解析に取り組む。また、色弁別の多様性や進化についての知見を得るために、魚類以外の動物の色弁別メカニズムの解析についても精力的に行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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