研究概要 |
細胞内外の環境維持に重要な能動輸送体は,エネルギーを消費して細胞膜を介した物質輸送を行う膜蛋白質であり,二次性輸送体は一次性輸送体が作り出したH+,Na+等のイオンの濃度勾配をエネルギー源として,低分子化合物を能動的に輸送する役割を持つ.特にこの二次性輸送体は,アミノ酸,核酸,糖,薬剤など,重要な生理活性物質の細胞内外の分布を決定づけている.そのため,これらの輸送体のヒトにおける機能異常は様々な疾病と深く関係している.本研究は,生物学的,医学的応用の両面から重要である二次性能動輸送体,多剤排出輸送体MATE,Ca^<2+>カチオン交換体CaCA,オリゴペプチド輸送体POTのX線結晶構造解析・機能解析を行っている. MATEに関しては構造解析可能な分解能まで回折する結晶を得ることに成功したが,X線損傷によりデータセット測定が困難なため,今後さらなる結晶の改善を行う.また,並行してセレノメチオニン置換体結晶を調製し,構造決定を目指す.CaCAに関しては,様々な条件のスクリーニングや条件精密化により,最大300μm程度の大きさの結晶が得られたが,構造解析可能な分解能まで回折する結晶を得るには至らなかった.今後さらなる改善を目指す,POTに関しては,構造解析可能な分解能まで回折する結晶を得ることに成功し,Nativeデータセットの収集に成功した.さらに,セレノメチオニン置換体結晶を調製し,SAD法による構造決定に成功した.今後は,POTによる基質輸送活性測定を試験管内で行う系を立ち上げ,構造に基づいた変異体の作成を行い,オリゴペプチドや薬剤輸送の機構解明を目指す.またさらに,構造に基づいた分子動力学シミュレーションを行い,POTによる基質輸送の動的メカニズムの解明を目指す.
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