ユビキチン化はプロテアソームによる分解やタンパク質輸送のシグナルとして機能するタンパク質の翻訳後修飾である。ユビキチン化はリン酸化のような可逆的反応であり、細胞内ではユビキチン化反応と脱ユビキチン化反応が拮抗している。後者の反応を実行しているのが一連の脱ユビキチン化酵素群である。脱ユビキチン化酵素はヒトでは約70種類、出芽酵母では20種類存在するが、一部の分子を除いて生理機能や使い分けなど多くの問題が未解決である。本研究では出芽酵母全脱ユビキチン化酵素の生化学的性質と生理機能を網羅的に解析することで、脱ユビキチン化酵素の機能重複性と特異性を明らかにすることを目的としている。 平成22年度は、脱ユビキチン化酵素の活性中心に変異を導入した基質トラップ型変異体を網羅的に作製し、20種の酵母変異株を得た。そのうち10種類について定量的質量分析法により細胞内で結合する標的タンパク質と認識するユビキチン鎖の構造を解析した。その結果、複数の脱ユビキチン化酵素について特異的に相互作用するタンパク質が同定され本方法が有効であることが明らかとなった。また、脱ユビキチン化酵素の切断するユビキチン鎖の構造特異性を明らかにするため、コムギセルフリー系を用いて全20種類の脱ユビキチン化酵素のタンパク質合成に成功した。今後もこれらの解析を進展させる。一方、脱ユビキチン化酵素の一つUbp6がプロテアソームの分子集合の初期の段階から結合していることを見出し、Ubp6はプロテアソーム前駆体に結合する有害なユビキチン化タンパク質を除去することでプロテアソームの分子集合を正に制御するというモデルを提案し報告した。
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