研究概要 |
これまで、脱ユビキチン化酵素Ubp2、Ubp12、Ubp14、Ubp15がユビキチン前駆体Ubi4のプロセシング酵素であること、Ubp6がプロテアソームの分子集合を制御していることを見出している。平成24年度は以下の解析を実施した。 1.脱ユビキチン化酵素多重破壊株の作製 試験管内の実験により見出されたユビキチン前駆体プロセシング酵素の候補UBP2、UBP12、UBP14、UBP15について各遺伝子破壊株を掛け合わせることにより、ubp2D ubp12D ubp14D ubp15D四重破壊株を作製した。しかし、四重破壊株は、ubi4Dの表現系(高温ストレスやアミノ酸アナログ感受性)を示さず、ユビキチン抗体によるウェスタンブロット解析や、細胞抽出液を用いたユビキチン前駆体のプロセシングも野生株のものと差異は認められなかった。さらなる多重破壊株作製のためCre-loxP法により、残りの全ての組み合わせで6重破壊株まで作製したが、ubi4D様の表現系を示す株は未だ得られていない。 2.脱ユビキチン化酵素のユビキチン鎖切断特異性の解析 細胞内には8種類の異なる構造のポリユビキチン鎖が存在する。これらのユビキチン鎖を識別する方法として定量質量分析計が広く用いられているが、複雑な試料からK6鎖やK29鎖などの微量ユビキチン鎖を検出することは困難である。そこで、最新型の高分解能質量分析計を用いたParallel Reaction Monitoring法を用いることで複雑試料中からユビキチン鎖を絶対定量する方法を確立し、複雑試料中から全ての種類のユビキチン鎖を少なくとも100 amolから定量可能であることを明らかにした(Tsuchiya et al, BBRC, in press)。本手法を用いることで、細胞内における脱ユビキチン化酵素のユビキチン鎖切断特異性を直接解析できると期待される。
|