研究課題/領域番号 |
22687017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 妙子 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (40402804)
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キーワード | Hes1 / オシレーション / 幹細胞分化 / ES細胞 / 転写因子 / 翻訳後修飾 |
研究概要 |
ES細胞の分化は一様ではなく、個々の細胞が様々なタイミングで、様々な方向へ分化する。我々は、抑制型の転写因子Hes1が3-5時間の周期でES細胞内で発現振動(オシレーション)していること、さらに、この振動が下流遺伝子の発現を変動させて、ES細胞の分化のタイミングや運命決定に寄与していることを見いだした。Hes1発現のダイナミックな変化により、様々な分化ポテンシャルをもつES細胞が共存して、不均一な分化様式を維持していると考えられる。しかし、幹細胞におけるHes1のオシレーションを支える分子機構はほとんど明らかになっていない。 発現がオシレーションする転写因子では、転写ネットワーク内に自らの振動を制御する管理システムの存在が示唆されている。また、Heslタシパク質と直接相互作用してHes1機能を調節するタンパク質性因子のプロテオーム解析は未だ報告されていない。我々は、転写因子Hes1により制御される遺伝子群をchip-chip法により、また、Hes1タンパク質と直接相互作用する新規タンパク質因子をHes1抗体を用いた免疫沈降法とマススペクトル解析により、網羅的に同定してきた。平成23年度は、同定された遺伝子群の解析を行い、Hes1タンパク質の機能調節に関与すると考えられる因子群とHes1タンパク質との相互作用を培養細胞で確認することができた。また、それらの中からHes1タンパク質の翻訳後修飾に関わる遺伝子を複数同定することができた。今後は、これらの候補遺伝子がHes1タンパク質およびその機能をどのように制御しているのかを調べる。これらの解析により、幹細胞におけるHes1のオシレーションを制御する分子機構を明らかにでき、最終的には、明らかになった細胞システムを利用して、Hes1の発現動態を操作することにより、効率的で均一な細胞分化を達成できるかを検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
網羅的に同定した各因子とHes1との相互作用解析等を行い、候補因子をしぼることはできた。今後、これらの候補因子について機能解析を行い、Hes1機能やオシレーションへの影響を調べていく。交付申請書に記述した研究の目的のうち、Hes1のオシレーションを支える細胞機構を明らかにする点については順調に進展しているといえるが、Hes1のレベルを人為的に操作する点、均一な分化細胞を得るための方法を確立する点は未だ検討出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
同定したHes1タンパク質の翻訳後修飾に関わる遺伝子がHes1タンパク質およびその機能をどのように制御しているのかを調べていく。精製タンパク質、培養細胞、ES細胞を用いて解析を行う。その結果から、Hes1のオシレーションを制御する分子機構が分かると考えられるため、上記の解析を先に行う予定である。その後、明らかになった細胞システムを利用して、Hes1の発現動態を操作することにより、Hes1のレベルを調節し、効率的で均一な細胞分化を達成できるかを検討していきたい。
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