研究課題/領域番号 |
22687017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 妙子 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (40402804)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Hes1 / オシレーション / 幹細胞分化 / ES細胞 / 転写因子 / 翻訳後修飾 / ユビキチン化 |
研究概要 |
我々は、抑制型の転写因子Hes1が3-5時間の周期でES細胞内で発現振動(オシレーション)していること、さらに、この振動が下流遺伝子の発現を変動させて、ES細胞の分化のタイミングや運命決定に寄与していることを見いだした。Hes1発現のダイナミックな変化により、様々な分化ポテンシャルをもつES細胞が共存して、不均一な分化様式を維持していると考えられる。しかし、幹細胞におけるHes1のオシレーションを支える分子機構はほとんど明らかになっていない。 発現がオシレーションする転写因子では、転写ネットワーク内に自らの振動を制御する管理システムの存在が示唆されている。また、Hes1タンパク質と直接相互作用してHes1機能を調節するタンパク質性因子のプロテオーム解析は未だ報告されていない。我々は、転写因子Hes1により制御される遺伝子群をchip-chip法により、また、Hes1タンパク質と直接相互作用する新規タンパク質因子をHes1抗体を用いた免疫沈降法とマススペクトル解析により、網羅的に同定してきた。同定された遺伝子群の解析を行い、Hes1タンパク質の機能調節に関与すると考えられる因子群とHes1タンパク質との相互作用を細胞内で確認し、それらの中からHes1タンパク質の翻訳後修飾に関わる遺伝子を複数同定することができた。平成24年度は、これらの候補遺伝子のなかから、Hes1タンパク質のユビキチン化状態を調節する因子を同定し、in vivo, in vitroでの解析を行った。複数の候補因子に関して解析を行っており、解析は現在も進行中である。これらの解析により、幹細胞におけるHes1のオシレーションを制御する分子機構を明らかにできると考えており、最終的には、明らかになった細胞システムを利用して、Hes1の発現動態を操作することにより、効率的で均一な細胞分化を達成できるかを検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的に同定した各因子によるHes1機能調節を明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
同定した因子によるHes1タンパク質制御機構の結果をまとめる。他の候補因子の機能解析も行う。Hes1のオシレーションへの影響を調べ、オシレーションを調節できるか検討する。
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