葉緑体は、今から十億年以上前にシアノバクテリアが真核細胞内に共生して誕生した。共生関係を恒常的に維持するためには、現存の藻類に見られるように、共生体の分裂増殖を宿主細胞分裂周期に同調させる必要があった。我々は、これまでに、葉緑体分裂が宿主核コードのタンパク質群によって形成される分裂装置によって引き起こされることを明らかにしてきた。本研究の目的は、(1)宿主細胞分裂周期による葉緑体分裂の制御機構、(2)葉緑体の光合成活性が宿主細胞周期進行に与える影響を解析し、宿主・共生体分裂同調が、共生体と宿主双方の関与によって如何にして成り立っているのかを解明することである。 本年度は、単細胞紅藻シアニディオシゾンを用いて、光合成と宿主細胞周期進行がどのように協調的に制御されているかを解析した。その結果、宿主細胞の細胞周期進行が、光合成の蓄積量に依存するだけでなく、概日リズムによっても制御されていることが明らかとなった。さらに、光合成の蓄積量及び概日リズムの両方がが、同一のG1/S移行転写因子複合体に感知されることを明らかにした。これらの結果、宿主細胞周期進行と光合成活性が、概日リズムにより協調的に制御されていることが示唆された。
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