本年度は,最終的な異質倍数体(A. kamchatica)の解析に向けて,親種のひとつであるハクサンハタザオ(A. halleri gemmifera)のゲノム解析に注力した.次世代シークエンサーを用いて台湾産,日本産のそれぞれの野生種のサンプルより得られたDNAについて配列を決定した.その結果,それぞれについて以前よりも高品質なゲノム配列のアセンブル(N50=50~100kb)を得ることができた.技術的な問題により,ゲノム配列の連結度(どれだけ連続した塩基配列が得られたか)については必ずしも満足のいくものではなかったが,断片化された情報であっても,雑種のアリル特異的な遺伝子発現パターンを解析するには十分であると考えられる.この得られた配列を既に国際グループによって解読されている近縁種のA. lyrataゲノムと整列を行い,二種で異なっている塩基の数を推定した. また,ゲノム規模の解析と並行して,ゲノム上の約100座位についてArabidopsis近縁種のDNA配列を解析した. その結果,遺伝子ごとの置換率の違いが比較的大きいことや,同祖遺伝子を比較した場合,およその年あたり塩基置換率が草本類であるAdapidopsisは木本類であるポプラよりも桁違いに高いことが分かった.この現象は世代時間効果として知られており,植物においても年あたりの突然変異率よりもむしろ世代あたりの突然変異率が一定に近いということが示唆された.
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