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2011 年度 実績報告書

低酸素環境下における作物挙動と適応反応性に関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22688002
研究機関北海道大学

研究代表者

実山 豊  北海道大学, 大学院・農学研究院, 講師 (90322841)

キーワード耐湿性 / 低酸素 / 水耕栽培 / 根域 / 湿害
研究概要

ダイズ湿害の主な要因の1つである種子発芽段階での低酸素耐性(冠水耐性)について試験した。湿害耐性が極端に異なるダイズ品種を、低酸素ストレスを負荷しながら水耕栽培し、湿害に対する耐性の評価を行った。予備試験において特徴的な湿害耐性を示した2品種、ハヤヒカリとトヨムスメは、発芽率や根伸長を尺度とした湿害評価の結果、ハヤヒカリに比べトヨムスメにおいて、有意な湿害感受性が検出された。更に、両者の吸水過程を精査したところ、トヨムスメでは、その能動吸水能に比べて過剰な受動吸水による水の流入が生じている傍証が得られた。本現象の根源を調査する目的で、種皮単体(透水コンダクティビティの調査)、子葉単体(吸水に伴う裂開程度の調査)または種皮/子葉の相互作用(種皮/子葉間隙消長の調査)に関する精査を行ったが、トヨムスメにおける湿害感受性を説明するに至らなかった。そこで、品種間の微細構造差異についての調査を行ったところ、実体顕微鏡もしくは光学顕微鏡レベルでは検出できなかったが、Cryo-SEMを用いた種皮裏面の観察において、湿害感受性のサンプルのみに、直径10μmほどの窪状構造および直径1μm程の孔隙構造が確認された。これらの生体構造が受動吸水時にどのように機能しているのかについては不明だが、湿害感受性に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられる。これら形態構造的な差異の他に、水の流入を制御する水チャンネルの影響も考えられる。
これらの情報は、今後予定しているin vitroでのダイズ実生の耐湿性アッセイ系のための基礎情報として重要である。とりわけ、ダイズの低酸素順応過程において、実生の段階でその関わりが予想される「根域水チャンネル(アクアポリン)」の役割が、発芽の段階においても想起され、生育段階に関わらない共通の環境適応機構が存在する可能性が考えられた。今年度得られた結果は、ダイズ作における過湿傷害発生過程を解明するための礎的な意義がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究対象としているダイズ湿害は、生理・形態的な現象が複雑に絡み発生しており、当初初発原因の1つの考えていた浸透物質の消長についてはネガティブな評価が得られるなど、現象解明に向けての進展という意味合いではやや遅れてる感は否めない。次年度の最終年度において、現象の根幹に辿り着くべくタンパク質分析に専心し、遅れを取り戻せればと考える。

今後の研究の推進方策

これまでの成果から、ダイズ湿害の発生には、発芽・実生の様々な生育段階において、植物体内への水の出入りに関する動向が重要と考えられ、低酸素環境はそれらの動向に関しトリガー的な役割を果たしているもの推測される。生理的または微細形態的な傍証においては、生体内への水の出入りに直接的に関与する因子が見当たらず、今後は、生体膜上(原形質膜および液胞膜)に存在する水チャンネルの役割に着目し、研究を推進する。また、残された研究期間を鑑み、当初遺伝子発現レベルでのアッセイを予定していたが、より重要な「水動向の作用点」である遺伝子産物のタンパク質そのもの(アクアポリン)の消長に焦点をあてて研究を進めるよう変更する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 北海道産ダイス2品種の種子冠水害発生機序における品種間差異-種子の調湿処理と吸水動向に着目して-2012

    • 著者名/発表者名
      実山豊・紺野裕太郎
    • 学会等名
      日本作物学会 233回講演会
    • 発表場所
      東京農工大学(東京都府中市)
    • 年月日
      20120329-20120330

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公開日: 2013-06-26  

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