研究概要 |
本研究では、カイコガ(Bombyx mori)をモデルとして、性フェロモン受容体遺伝子の特異的発現を制御する分子間ネットワークを明らかにすることを目的とする。本年度は、in vivoプロモーターアッセイによるカイコガ性フェロモン受容体遺伝子BmOR1およびBmOR3の特異的発現に必要な最小プロモーター領域の決定を中心に研究を進めた。BmOR1については0.5kb, 1kb, 2kbの上流領域をプロモーターとしたGAL4系統を作出し、UAS-GFPと交配後、GFP発現パターンを解析した。なお、BmOR1、BmOR3の発現細胞は触角葉の大糸球体と呼ばれる構造の中のtoroid、cumulusと呼ばれる領域にそれぞれ選択的に軸索投射をすることが明らかになっている。簡便に解析を進めるために、本研究では、GFP発現細胞の触角葉への投射パターンを指標としてプロモーターの活性を推定した。BmOR1はプロモーターとして利用した領域に関わらず、いずれの個体においてもtoroidへの投射が確認されたが、cumulusへの投射が検出された個体はいなかった。これらの結果から、0.5kb以内にフェロモン受容細胞での発現を活性化するシス配列が存在することが示唆された。なお原因は不明であるが、一部の個体では、toroidに加えて一般臭の受容細胞が投射する常糸球体への投射がみられた。BmOR3に関しては0.5kb, 1kb, 1.5kbの上流領域をプロモーターとしたGAL4系統を作出し、同様の解析を行ったが、いずれの系統においても触角葉におけるGFP発現は観察されなかったことから、BmOR3の発現にはさらに上流領域に含まれるシス配列が必要である可能性が示唆された。
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