研究概要 |
本研究では,世界で3億人分の食糧減産の要因となっている寄生雑草の防除戦略の構築を目的とした.そのために,根寄生雑草の特徴的な生活環に着目し,これらの寄生種に固有の代謝経路を阻害することで,全く新しい選択的かつ効果的な寄生雑草防除法を確立することを試みた.寄生雑草(ヤセウツボ)の発芽過程における代謝変動をメタボロミクスにより分析したところ,特徴的な三糖が発芽の進行と共に減少することを見出した.この減少と同時に単糖のグルコース,フラクトースの上昇が観察されたことから,この三糖がヤセウツボの発芽に必要な単糖の供給源となっていることが示唆された.さらに,糖加水分解酵素阻害剤であるノジリマイシンが三糖の中間代謝物である二糖の分解を阻害することで,ヤセウツボの発芽を抑制出来ることが示された.この効果は,ヤセウツボだけではなく他のハマウツボ科の寄生雑草でも確認され,さらに,ポットレベルで実際に宿主植物が存在する環境でも発揮されたことから,この三糖の代謝阻害剤が寄生雑草選択的な除草剤として応用できることが示された.そこで,ノジリマイシンの作用点となっている酵素の探索を行ったところ,この酵素が発芽時に細胞壁あるいは細胞膜に局在するタンパク質として誘導されることが示唆された.そこで,発芽種子より調製した粗酵素液についてカラムクロマトグラフィーによる精製スキームの作成を行った.また,発芽種子中で発現している遺伝子の配列を検索し,この酵素をコードしている可能性が高い遺伝子を取得した.
|