研究課題
味覚コーディング機構を解明する端緒として、酸味情報を伝達する神経回路を可視化する目的で、酸味受容細胞特異的に経シナプストレーサー分子コムギ胚芽レクチン(WGA)を発現するトランスジェニック(Tg)マウスの作出を試みた。研究代表者自身が発見した酸味受容体PKD1L3遺伝子の5'上流約10kbをWGA遺伝子の発現制御領域として用いて、2系統のTgマウス(PKD1L3-WGA)を確立した。二重in situハイブリダイゼーション法と二重免疫染色法を用いた解析から、PKD1L3-WGAマウスでは、WGAのmRNAとタンパク質はいずれも、有郭乳頭と葉状乳頭味蕾において、内在のPKD1L3と同じ味細胞に共発現した。酸味受容細胞特異的に外来遺伝子を発現誘導する制御領域として、このPKD1L3遺伝子の5'上流約10kbが適切であることが判明した。次に、味神経の細胞体が存在する顔面神経膝神経節と迷走神経節状神経節・舌咽神経下神経節では、抗WGA抗体を用いた免疫染色法によって、輸送されたWGAタンパク質が検出された。この事実は、電気生理学的に証明されていた鼓索神経の葉状乳頭への投射が、初めて解剖学的に示されたことを意味する。さらに高次の延髄孤束核においても、主に舌咽神経の投射領域で強いシグナルが観察された。以上のように、舌後方の有郭・葉状乳頭の酸味受容細胞から、延髄孤束核に至る酸味情報伝達神経回路の可視化に成功した。現在、酸味と甘・うま味や苦味の情報伝達神経回路の関係を解明することを目的として、各神経細胞段階におけるWGAシグナルを、甘味・うま味TIR3-WGAマウスや苦味T2R5-WGAマウスと比較解析している。
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