研究課題
日本の沿岸部には海岸林が成立しており,そこで生育するクロマツの細根のほとんどは外生菌根菌と呼ばれる土壌菌との共生体である外生菌根を形成する.そのうち,Cenococcum geophilum(以下,Cg)が優占と示唆された.そこで本研究は本種の耐塩性,耐熱性を明らかにすることを目的とし,地理的に多様な海岸林に由来する菌株について,異なる塩化ナトリウム(NaCl)濃度条件下および温度条件下における培地上での菌糸伸長を明らかにした.7県8か所(青森県,富山県,石川県,静岡県,愛知県,三重県,鹿児島県)の海岸林において,林冠を構成するクロマツ成木に形成されたCg菌根から菌を分離,培養し,Modified Melin-Norkran(MMN)培地で保存した.各菌株について菌体を含む直径6mmのプラグを作成した.NaCl濃度を6段階(最大400mM)に調整したMMN培地上に静置し,暗条件下,25℃で2か月間培養した.また4段階の温度処理条件下(25,30,35,40℃区)で2週間,10日毎に直行する水平方向の菌糸伸長量をノギスで計測した.その結果,200mMから400mM NaClの間で有意な伸長量の減少が認められた.調査地間での菌糸伸長は有意に異なるが,NaClに対する反応は相互に類似していた.そして,林分内にはNaCl耐性の異なる多様なCgがクロマツの根に定着していた.25℃から35℃では,温度が高くなるにつれ菌糸伸長は阻害された.40℃では菌糸伸長はみられなかったが,供試した菌株の半数において35℃区での菌糸の再伸長が確認された.以上より,耐塩性,耐熱性に対する本種の種内変異は大きく,環境ストレスに対して高い耐性を有する菌株が存在する可能性を示唆した.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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