研究課題/領域番号 |
22688012
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
相川 拓也 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (90343805)
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キーワード | マツノマダラカミキリ / ボルバキア / マイクロインジェクション / 生殖異常 / マツ材線虫病 |
研究概要 |
本研究の目的は、アズキゾウムシ由来のボルバキアをマツノマダラカミキリに導入することにより、マツノマダラカミキリの生殖機能にどのような影響が生じるのかを明らかにすることである。昨年度の実験により、アズキゾウムシのボルバキアをマツノマダラカミキリの蛹に人為的に注入することによって、ボルバキアを保持したマツノマダラカミキリ成虫を得られることが示されている。そこで今年度は、ボルバキアを注入した雌成虫から次世代の個体にボルバキアが移るかどうかを調査した。 まず、アズキゾウムシの蛹からボルバキア溶液を作成し、そのボルバキア溶液をマツノマダラカミキリの蛹に注入した。羽化後、雌成虫に産卵させ次世代孵化幼虫を採集し、PCR法を用いてボルバキア感染の有無を調査した。また、孵化した幼虫を人工飼料上で成虫に発育させ、それら成虫から卵巣あるいは精巣を取り出し、上記と同様にPCR法を用いて成虫の感染率についても調査した。 調査した183頭の孵化幼虫のうち、ボルバキアが検出されたのは1頭だけであった。また、成虫については45頭(雄成虫20頭、雌成虫25頭)調べたものの、どの個体からもボルバキアは検出されなかった。昨年度の結果と併せて考えると、アズキゾウムシのボルバキアをマツノマダラカミキリの蛹に注入した場合、注入した個体にはボルバキアが安定的に定着するものの、次世代の個体にはボルバキアはほとんど移らないと言えるだろう。しかし、1頭だけではあるが、汝世代幼虫への感染が確認できたことから、ボルバキアをマツノマダラカミキリの蛹へ注入するという方法でも、注入した個体から子孫への感染が起こることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロインジェクション法を使って、アズキゾウムシ由来のボルバキアをマツノマダラカミキリに定着させることに成功しており、おおむね予定通り進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マツノマダラカミキリに注入したボルバキアがより効率的に次世代の個体に感染するように、新しい注入方法を試みる予定である。
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