本課題は、木材の接着において接着剤の浸透度合いと種々の接着性能の関連性を明らかにし、これを基に、どのようにしたら信頼性と製品歩留まりが高い木質材料が得られるか、接着剤の特性も含めた接着条件の設計指針を提示する。 本年度は、水性高分子-イソシアネート系木材接着剤(API接着剤)でマカバ板二枚を接着した最もシンプルな接着体を作成し、1.横断面と放射断面との両接着層を走査型レーザー顕微鏡で観察、2.顕微像を画像解析して得たヒストグラムから分布様を表現する導関数と代表値の算出、3.常態および促進劣化処理後の接着性能試験、4.2.と3.とを結びつける接着理論を導出、以上を行った。 既存の報告から予想されるのと同様な観察像が得られた。それはAPI接着剤は接着界面付近での軸方向の木部繊維および放射方向の柔細胞、接着界面から離れた道管と道管壁孔およびその周辺の柔細胞、これら組織内腔への浸透が見られた。なお、接着層中心から1mm離れた点でも観察された。 約40試験体の顕微鏡像を画像解析して、接着剤量と接着層中心からの距離とを関連づけたヒストグラムを作成した(標点数約8万)。接着層中心から約0.05mmまでに約70%の接着剤が存在し、これは接着層とその付近の木材細胞の内腔の浸透を示している。0.05mmより遠い方向へ向かうと、徐々に接着剤の存在が少なくなる。これは接着剤が木材の放射組織および道管内腔への浸透を示している。以上二つの傾向が見られたので、ヒストグラムを二項の正規関数へあてはまるよう回帰計算をした。その結果、関数の変数が木部へ浸透を表現できるのが明らかになった。この解析方法を次年度の発展的研究に使用する。 なお研究の過程で、現存するほとんどの樹種および木材用接着剤のどの組み合わせでも木部と接着材部を明確に分離した顕微鏡像を得る手法も開発した。
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