東南アジアにおける食肉需要の増加に伴い、畜産物の生産・流通構造はダイナミックに変化している。ベトナムでは特に近年の経済発展に伴う牛肉需要の増加に対応するため、タイやラオスからの陸路による輸入が急増し、これに伴う家畜疾病や食品衛生の問題が懸念されている。今年度はベトナムの牛肉流通について引き続き調査を行うとともに、タイの国内での牛肉生産および流通構造の変化について把握するため、現地ヒアリングとアンケート調査を実施した。この結果、タイ中部においてもベトナムや中国、マレーシアから多くの流通業者が牛を買い付けにくること、取引価格は、タイ国内に比べ周辺諸国が高いことから機会主義的な取引が行われていることが明らかとなった。 また、ベトナムでは、昨年実施したアンケートに加え、食中毒の経験やその際の個人対応、医療システムについて調査項目を加え、食学生の子供を持つ母親約200名に対して調査を行った。タイでは、ベトナムと同様の調査票を用いて、牛肉生産者、流通業者、屠畜業者および消費者を対象にアンケートを実施した。 これまでの調査結果をもとに現場の獣医師や研究者と実施した意見交換会からは、ASEAN諸国で共通の畜産物品質保証制度の必要性が指摘された。
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