研究課題
放射性同位元素をトレーサとして植物に投与し、その後の濃度分布を画像化するイメージング手法は、植物中の栄養素や汚染物質等の動態を明らかにし、植物研究に新たな知見を与えるものだが、これら既存の方法で可視化できる元素は一度に1種類に限られている。同一環境下・同一個体内において競合する複数の元素動態を同時にイメージングするには新たなイメージング技術の開発が必要となる。そこで、原子力機構では、JAXAで宇宙ガンマ線の観測技術として開発されたSi/CdTeコンプトンカメラを基盤として、コンプトンカメラの植物研究への応用技術の開発を進めてきた。コンプトンカメラとは、RIイメージング装置において必須となる空間分解能に加え、エネルギー分解能を併せ持つイメージング装置であり、ガンマ線源であるトレーサ核種の弁別が可能となる。植物研究への有用性を示すため、作物の生産を阻害する環境ストレスの1つであるナトリウム(Na-22: 511 keV)と、微量必須元素であるマンガン(Mn-54: 835 keV)の二核種のトレーサを用いて実証実験を行った。播種後約6週間の水耕栽培イネに、Na-22およびMn-54を水溶液から同時に経根吸収させ、イネの地上部を1週間連続撮像した。その結果、両元素とも茎基部への強い集積を示したが、地上部の葉への移行性に差違が認められた。さらに、第3展開葉が開いた水耕栽培ダイズを用いて同様のイメージングを実施したところ、二つの異なる元素動態の撮像に成功している。これらの実験により、本手法が植物体内の複数元素の同時イメージングに有用であることが示されたと言える。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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