研究課題
動物の恒常性維持機構の解明は、主として陸上環境を念頭に研究がこれまで為されてきた。しかし、地球上には生活の大部分を空中や水中で過ごす哺乳類、鳥類が数多く生息している。これらの動物が、どのように非陸上空間で体内の恒常性を維持しているか調べるのは、これまで困難であった。本研究では装着可能な小型計測機器を用いることで、自然界で動物が自発的に飛翔・潜水を行う際の生理状態を調べる。従来とは異なる空間軸における恒常性維持機構の理解によって、自然界に生息する多様な動物に通底する生理機能の理解に新たな視点の提供が期待できる。本年度は、潜水動物であるウェッデルアザラシを対象に、安静時の呼吸および心拍動の特性を明らかにした。ウェッデルアザラシは安静時に、数回の呼吸の後、2分程度の呼吸を停止する。この呼吸停止期の心拍間隔の分布を調べたところ、分布は二峰性を示した。このように心拍間隔の分布が二峰性となる現象は、健康な動物では安静時の競走馬で報告されており、第2度房室ブロックが原因とされている。このことは、健康なアザラシにおいても、安静時に房室ブロックが発生している可能性を示唆していると考えられる。アザラシとウマでは、動物としての特性が大きく異なり、活動時には走行または潜水を行う。ただし、この2種類の活動は、個体が活動時に利用できる酸素量に比べて、その要求量が大きいという点で一致しており、この2つの動物種間では循環器系に何らかの機能的収斂があるのかもしれない。
2: おおむね順調に進展している
解析ソフトウェア開発拠点の形成は当初予定していた通りに進展している。また、飛翔動物と潜水動物、それぞれの生理機能の解明が順調に進んでいる。これらのことから、研究目的の達成に向けて、順調に研究が進展していると判断した。
これまでのところ、順調に研究が進展している。今後も順調に研究が進展するよう、当初の計画通りに研究を遂行する。
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