研究課題
動物の恒常性維持機構の解明は、主として陸上環境を念頭に研究がこれまで為されてきた。しかし、地球上には生活の大部分を空中や水中で過ごす哺乳類、鳥類が数多く生息している。これらの動物が、どのように非陸上空間で体内の恒常性を維持しているか調べるのは、これまで困難であった。本研究では装着可能な小型計測機器を用いることで、自然界で動物が自発的に飛翔・潜水を行う際の生理状態を調べる。従来とは異なる空間軸における恒常性維持機構の理解によって、自然界に生息する多様な動物に通底する生理機能の理解に新たな視点の提供が期待できる。今年度は、これまでの研究から得られた成績を元に、心電図解析システムの改良を行った。無拘束下の動物から、ノイズの少ない心電図を得るには電極の接地面積を広くすることが有効であることが判明したため、これらの条件を改良した記録計を新たに開発した。この心電図記録計を、加速度センサーとともに動物に装着し、自由行動下での心拍数を計測し、そこからエネルギー消費量を推定した。例えば、体重4kgのアホウドリでは、飛翔時の平均エネルギー消費速度は体重1kg当たり4.7ワットであった。このエネルギー消費速度は、滑空時だけに限定すると4.0ワットであった。このエネルギー消費速度の違いは、定常飛翔時には羽ばたきに起因していると考えられ、これによって羽ばたきによって消費されるエネルギー量を見積もることが可能となった。一方で、鳥類の離陸直後のエネルギー消費速度に着目すると、エネルギー消費速度の増大は羽ばたきでは説明することが出来なかった。離陸直後のエネルギー消費速度増大は、体の動きに依存しない活動に起因している可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
新型の心電図解析システムの開発は、当初の予定より若干の遅れが見られたが、運動に伴うエネルギー消費速度についての知見は順調に得ることができている。これらのことから、全体としては研究目的の達成に向けて、順調に研究が進展していると判断した。
これまでのところ、順調に研究が進展している。今後も順調に研究が進展するよう、計画に従って、研究を遂行する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)
Mar. Mammal Sci
巻: 28 ページ: 345-357
10.1111/j.1748-7692.2011.00482.x
Polar Biol.
巻: 35 ページ: 969-972
10.1007/s00300-011-1140-9
Am. Nat.
巻: 180 ページ: E31-E41
10.1086/666001
J. Vet. Med. Sci.
巻: 10 ページ: 1311-1314
10.1292/jvms.12-0067