研究概要 |
研究代表者(長谷川)が発見した家族性に自然発症するてんかんネコを基に,新しいてんかんモデル動物を確立すべく,平成22年度はそのてんかんネコの家系解析,臨床的観察(発作の症候学),頭皮上脳波解析および慣例的な構造的MRI解析を行った.これに加え,てんかん発症個体同士での繁殖能を確認するため,てんかん発症個体同士での交配を行った.この結果,このてんかんネコ家系におけるてんかんの発現は常染色体性劣性遺伝(ただし多因子性を完全に除外できない)であることが強く疑われ,また解析を行ったてんかん発症個体の全ての個体(n=20;論文では14)でてんかん発作は辺縁系発作からの二次性全般化であること,頭皮上脳波では側頭・頭頂有意に突発性異常波が認められること,構造的MRIには何ら異常所見が認められないことを確認した.さらにてんかん発症個体同士の交配により,新生個体を得ることができ(すなわち発症個体に繁殖能力がある),また出生個体にも(臨床的な発作発現は未だ見られないものの)脳波上で突発性異常波が生じていることが見出された.この研究成果はてんかん研究の国際誌Epilepsy Research (Kuwabara T, et al. Vol. 92, p. 85-88, 2010)にて公表した.平成23年度以降は,これらてんかんネコの発作焦点を同定するための脳波的解析および機能的MRIを用いた画像解析,さらには病理組織学的評価,遺伝子解析へと進む計画である.また新しく出生したネコ(劣性ホモが疑われる)の発作発現を臨床観察し追跡する.
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