研究課題/領域番号 |
22688027
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
長谷川 大輔 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (20366793)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | てんかん / 動物モデル / 遺伝 / ネコ / MRI |
研究概要 |
全研究期間を通して行われるてんかん猫家系の繁殖・系統維持に加え,平成24年度は交付申請書に記載した研究実施計画に沿って,①深部脳波による焦点同定および②高磁場MRIを用いた脳機能画像解析を実施した. ①の深部脳波による焦点同定では,現在まで(平成25年3月31日)に予定していた個体数(n=4)での実験を行えたが,うち1頭において脳波電極に不具合が生じ,脳波記録を完遂できなかったため,平成25年度に持ち越して追加実験を行う予定でいる.これまでに得られている脳波記録からは本てんかんネコにおいてはこれまでの予想に一致して片側の扁桃核ー海馬複合体からの発作起始であると考えられるが,個体によっては左右のどちらからも発作波が記録できたものもあり,現在考察中である. ②の高磁場MRIに関する研究では,ほぼ予定していた画像データの取得は完遂し,データの解析を行い成果報告に備えていたが,年度末に(当科研費とは別に)当該施設に新たなMRスペクトロスコピー(MRS)解析ソフトウエアが配備され,現在はそのソフトウエアを用いて再度データを解析し直している状態である.これまでに得られた画像解析結果からは①の脳波所見と一部一致して左右何れかの海馬において体積萎縮および見かけの拡散係数(ADC)が上昇していることが示されたが,他の画像法(潅流強調画像や拡散テンソル画像)では特異的な変化が認められなかった. ①,②の研究成果はともに平成25年10月に開催される日本てんかん学会で発表,その後論文投稿を行う予定でいる.これに併せ,平成24年度には本てんかん猫家系の脳脊髄液中アミノ酸解析を行うことができたため,現在その成果報告として論文作成を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたとおり,深部脳波記録(1頭における電極不具合による実験のやり直しのため)およびMRS画像解析(新しい解析ソフトウエアでの追加解析のため)の一部に遅れを生じている.これらの遅れは平成25年度早期に完遂する予定でいる.一方,この一部の遅れに対して,当初(平成22年度)の研究計画では平成25年度より研究を開始する計画となっていた本てんかん猫家系の遺伝子解析および病理組織学的解析を平成24年度後期より始めることができており,これは当初の計画よりも進行している.結果的に平成24年度としては一部の研究に一定の遅れが生じているものの,平成25年度から開始する予定のものが前倒しして開始できているため,全体的には概ね順調に計画が遂行できているものと判断している.
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今後の研究の推進方策 |
上記の「現在までの達成度」の「理由」内で述べたとおり,平成24年度内に完遂できなかった深部脳波記録およびMRS解析を平成25年度前半に完了し,成果報告として平成25年度中に学会発表および論文投稿を行う. 平成25年度は既に一部で開始しているが,平成22年度の研究計画通り,①本てんかん猫家系の遺伝子解析および②病理組織学的解析を遂行する.①の遺伝子解析については既にてんかん発症個体(劣性ホモと推定される)および未発症親個体(キャリア;ヘテロと推定される)からのDNAサンプルを元にターゲット領域のゲノム解析を開始している.②については平成24年度中にてんかん脳病理解析に用いる各種染色法の選抜および染色技術の習得がほぼ終わり,今後はそれらの染色法等を用いた病理組織学的評価を順次進めていく. 平成25年度は本科研費交付の最終年度にあたり,後期よりこれまでの研究成果報告を可能な限り行うとともに,平成25年度実施する研究内容については平成26年度の早期に成果報告が行えるよう計画を遂行していく.
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