研究概要 |
本年度は全研究機関を通して行われるてんかん猫家系の系統維持に加え,平成25年度交付申請書に記載した研究実施計画の通り遺伝子解析および病理組織学的解析,ならびに新たに導入したMRスペクトロスコピー(MRS)解析ソフトを用いた脳代謝産物の再解析を行った. 遺伝子解析ではてんかん発症個体(劣性ホモ)およびその親(キャリア)のゲノムDNAを次世代シーケンサーによるエクソーム解析を実施した.その結果,総数850,801の変異塩基候補が検出され,その中から変異インパクトの高いものおよび発症個体でホモ結合,キャリアでヘテロ結合のものに絞り込みを行ったところ,130の候補となった.現在はこの130の候補を変異インパクトの高い順にシーケンス解析を行っているが,まだ本家系の原因遺伝子を同定するに至っていない. 病理組織学的解析ではヒト側頭葉てんかんで認められている海馬硬化(本てんかんネコ家系も側頭葉てんかん)に注目し,ヒト海馬病理と同等の手法で各種染色を行っている.まだ病理組織学的評価に供した個体数が少ないために,preliminaryな結果であるものの,発症個体では海馬錐体細胞,特にCA3領域の細胞数減少が認められた.この所見はこれまで行ってきた症候学解析,脳波所見や各種MRIの所見を裏付けるものであると想定している.今後免疫染色等を行い,遺伝子解析と並行して本家系の病態生理を解明する. 本年度は最終年度であり,これまで行ってきた各種研究成果を学会および論文として発表することを行ってきた.脳波解析の結果およびMRI解析の結果を第47回日本てんかん学会にて口頭発表し,現在詳細な脳波学的特徴をまとめた論文がEpilepsy Research誌で掲載が決定しており(まだ巻号項,DOI等は未確定),MRIの研究成果を2本の論文に分割し,投稿準備中である.本年度に行った遺伝子解析,病理解析については継続研究とし,成果がまとまり次第関連学会や学術誌にて公表する予定である.
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