研究課題/領域番号 |
22689005
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
立川 正憲 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (00401810)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヘミチャネル / パネキシン / コネキシン / 脳毛細血管内皮細胞 / 輸送 / 血液脳関門 |
研究概要 |
本課題は、脳梗塞急性期などの病態時における血液脳関門ヘミチャネル(パネキシン及びコネキシン)の生理学的役割を解明することを目的とする。本年度は、輸送速度論的な解析手法を用いて、血液脳関門の実体である脳毛細血管内皮細胞のヘミチャネルの開口に伴う、血液脳関門輸送系の変動機構とヘミチャネルサブタイプの寄与を解明することを目的とした。ヘミチャネルタンパク質は多量体で機能することが報告されていることから、まずヒト脳毛細血管内皮細胞株(hCMEC/D3細胞)におけるヘミチャネルサブタイプ発現のストイキオメトリーを解析した。前年度構築した液体クロマトグラフィー-質量分析装置(LC-MS/MS)を用いたヘミチャネルサブタイプの標的絶対定量プロテオミクス(QTAP)解析の結果、hCMEC/D3細胞にはパネキシン及びコネキシンの特異的なサブタイプが発現することが示された。これらのサブタイプに対し、siRNAを用いて特異的にノックダウンしたhCMEC/D3細胞への蛍光色素の取り込みは、細胞外のカルシウムイオン濃度をゼロにしたヘミチャネル開口条件において、ネガティブコントロールと比較して有意に低下した。血液脳関門が担う内因性物資の細胞内輸送においても、ヘミチャネル開口条件で有意に上昇し、ヘミチャネル阻害時にはほぼ正常レベルまでに回復した。従って、QTAPで同定したヘミチャネルサブタイプが、ヒト血液脳関門輸送系の変動機構として寄与することが示唆された。さらに、ヘミチャネルサブタイプの配列類似ペプチドを用いてスクリーニングを行った結果、hCMEC/D3細胞においてヘミチャネル開口の阻害活性を示すペプチドが同定された。以上の結果から、脳血管内皮細胞ヘミチャネルの開口阻害剤が、病態時における血液脳関門輸送系の変動を抑制するための分子標的薬として有用である可能性が新たに見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ヒト脳毛細血管内皮細胞株を用いたヘミチャネル開口に及ぼすサブタイプの同定と、ヘミチャネル開口制御法の基盤開発を行い、当初の計画通り順調に結果を得た。特に、ケミカルバイオロジーの専門家との連携によって、ヘミチャネル開口制御法の開発への糸口をつかむことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに蓄積したヒト血液脳関門in vitroモデルを用いたヘミチャネル研究基盤を軸として、脳血管障害を専門とする臨床家との連携を強化することで、本研究の一層の推進を図ります。さらに、血液脳関門の病態モデルを用いたin vivoイメージングに関する共同研究を推進することによって、血液脳関門機能診断法の基盤開発の糸口を探ります。
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